
胃カメラ検査でわかる病気
胃カメラ検査でわかる病気
胃カメラ(上部消化管内視鏡検査)は、胃や食道、十二指腸などの消化管を直接観察し、さまざまな病気を発見するための非常に重要な検査方法です。最近では全国的に多くの患者様が胃カメラを受けられ、ヘリコバクターピロリ菌の感染を早期に発見・治療していることで胃がんの発生率が下がるなど、様々な病気の治療に結びついています。食道、胃、十二指腸は病気の早期発見が、より効果的な治療に繋がるため、定期的な検査を受けることが推奨されています。胃カメラ検査でわかる代表的な病気についてご説明いたします。
逆流性食道炎は、胃酸や消化液が食道に逆流することで食道の粘膜が炎症を起こす病気です。この状態が続くと食道が傷つき、最終的には食道狭窄や潰瘍、バレット食道などの合併症を引き起こす可能性があります。
胃カメラを使用すると、食道の下部に赤みや腫れ、潰瘍などの炎症が確認でき、逆流性食道炎の診断が可能です。また、胃や食道の粘膜の状態を直接観察することで、逆流性食道炎の程度や重症度を評価できます。胃酸を抑える胃薬にて改善、治療をすることが可能です。
バレット食道は、逆流性食道炎が長期間続くことで、食道の下部の粘膜が変化し、胃の粘膜に似たものに置き換わる病気です。この状態は食道がんのリスク因子とされており、早期発見が非常に重要です。
胃カメラ検査では、食道の粘膜の異常な変化を確認することができます。具体的には、食道の内壁がピンク色から赤紫色に変化している様子が見られることがあります。バレット食道が疑われる場合には、細胞を採取してがん細胞の有無を調べることも可能です。
食道カンジダ症は、カンジダ菌(真菌)の感染により食道に炎症を引き起こす病気です。カンジダ菌は常在菌と言われ、健常な人でも菌を保有していますが、免疫力が低下した際に、その数が増え、様々な症状を引き起こすことがあります。特に糖尿病患者や免疫抑制剤(ステロイドや抗がん剤など)を使用している患者に発症しやすいです。
胃カメラでは、食道内に白い斑点や膜が見られることがあり、これがカンジダ症を示唆します。さらに、感染が広がっている場合は、潰瘍や出血を伴うこともあります。カンジダ症の診断には、症状に加えて内視鏡での観察が必要で、抗真菌薬を内服することで治療することが可能です。
食道には様々なタイプの腫瘍が現れることがあります。最も一般的なのは食道がんですが、良性の腫瘍(例えば粘膜下腫瘍や乳頭種)も存在します。胃カメラを使うことで、食道の内壁にできた腫瘍や異常な組織の増殖を発見することができます。
食道がんは初期症状がほとんどなく、進行するまで発見が難しいことがあります。早期ですと食事の際に、しみる様な痛みが出現することがあります。進行するとより強い痛みを自覚し、つかえ感が現れることもあります。内視鏡で細かい変化を観察することにより、早期に発見することが可能です。また、良性腫瘍も内視鏡で確認でき、必要に応じて生検を行うことで良性か悪性かの判断をすることができます。
慢性胃炎は、胃の粘膜が長期間にわたって炎症を起こす病気で、萎縮性胃炎(ヘリコバクターピロリ菌による胃炎)はその一形態です。胃の粘膜が薄くなり、胃酸の分泌が減少することが特徴です。萎縮性胃炎は、胃がんのリスクを高めるとされており、早期に診断し適切な管理を行うことが大切です。慢性胃炎により胃痛や胃もたれ、食欲不振など様々な症状を引き起こすことがあります。
胃カメラでの観察では、胃の粘膜が赤く腫れていたり、萎縮して薄くなっている様子が見られます。さらに、胃の内壁に細かい傷や潰瘍がある場合もあります。
ヘリコバクターピロリ菌は、胃酸から自分を保護するウレアーゼ活性を持っており、胃の中に生息することが可能な細菌で、萎縮性胃炎の原因菌として知られています。萎縮性胃炎は上記で挙げた通り胃潰瘍や胃がんのリスクとなるため注意が必要です。ピロリ菌の診断には内視鏡による目視と、生検内での菌体の確認か、呼吸による検査(尿素呼気試験)、便による検査(便中ピロリ抗原試験)、採血による検査(血中ピロリ抗体測定試験)を行うことで診断が可能です。
診断がついた後は、抗菌薬を1週間内服することで除菌が可能です。ピロリ菌感染は放っておくと萎縮性胃炎の範囲が広がり、がんの発生リスクも高くなります。早期に診断、除菌を行うことが重要です。
胃ポリープは、胃の粘膜にできる小さな隆起物で、多くの場合は良性ですが、一部はがん化する恐れがあるタイプのものもあります。胃カメラでは、ポリープの大きさや形状、数を直接確認することができます。ポリープが小さい場合でも、定期的に検査を受けて変化がないか、増大していないか経過間観察することが重要です。胃カメラによる視覚的な診断に加えて、ポリープががん化していないかを調べるために、生検を行うことがあります。
胃や十二指腸に生じる潰瘍は、食事や飲酒による胃酸の過剰分泌やヘリコバクターピロリ菌の感染(除菌後含む)、ストレス、薬剤などが原因で発症します。食事によって増悪する強い心窩部の痛みが特徴的です。潰瘍が悪化すると出血や穿孔(腸壁が破れること)を引き起こし、入院や手術が必要となることがあります。内視鏡によって潰瘍のリスクを発見し、予防することが必要です。
胃カメラで潰瘍を確認すると、胃壁や十二指腸壁の粘膜が爛れて、中心が凹み潰瘍が確認できます。潰瘍が小さい場合でも放置すると、潰瘍に胃酸が暴露することで悪化する可能性があるため、早期に治療を開始することが推奨されます。
胃腫瘍は、胃に発生する腫瘍で、良性のものと悪性のものがあります。悪性の胃腫瘍(胃がん、悪性リンパ腫、肉腫、転移性腫瘍など)は、胃の内壁に現れる不規則な隆起や凹凸として観察されることがあります。早期で発見できれば内視鏡による切除が可能なことが多いですが、進行すると手術や抗がん剤治療が必要となることもあります。
胃の良性腫瘍は経過観察のみで問題のないタイプもあれば、前がん病変といわれる進行するとがんになるリスクを持つタイプの腫瘍もあります。細胞を採取して正しい診断をつけることが重要です。
十二指腸がんは、胃や食道がんと比較すると発生が稀な疾患です。しかし、がんが発生した際に、ほとんど症状が現れないため、定期的な検査が推奨されます。診断には食道がんや胃がん同様に腫瘍から生検を行うことで可能です。
胃カメラ検査はこれらの病気を早期に発見するために非常に重要な検査です。胃や食道、十二指腸に関する症状がある場合や定期的な健康チェックが必要な場合には、積極的に胃カメラ検査を受けることをお勧めします。どんな病気も早期に発見することで、治療が可能となり健康を保つことに繋がります。
初回は不安も多々あると思います。当院では患者様に寄り添った内視鏡の提供を心がけています。わからないことや不安なことがあれば何でもお気軽にご相談ください。
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